事業承継

製造業B社の円滑な事業承継

10年計画で準備を進め、後継者への円滑な事業承継を実現した事例です

事例概要

創業50年を超える精密部品製造業B社は、先代社長の引退に伴い、長男への事業承継を計画していました。しかし、会社の状況や税務面での課題が多く、スムーズな承継が難しい状況でした。当事務所では、10年間の長期計画を立て、組織体制の整備、税務対策、人材育成などを総合的に支援。結果として、経営の安定性を保ちながら、後継者への円滑な事業承継を実現しました。

95%
自社株評価減
10年
承継準備期間
45人
従業員数
製造業B社のイメージ

クライアントの課題

B社は、創業者(当時65歳)が一代で築き上げた精密部品製造会社で、年商約10億円、従業員45名を抱える地域の中核企業でした。創業者の高齢化に伴い事業承継を検討していましたが、以下のような複数の課題を抱えていました。

  • 後継者である長男(当時35歳)の経営経験不足
  • 自社株評価額が高く、相続税・贈与税の負担が大きい
  • 創業者への依存度が高く、経営基盤が脆弱
  • 古い設備や生産体制により、業界内での競争力低下
  • 取引先との関係が創業者の個人的なつながりに依存
  • 事業承継に関する社内体制や規程の未整備
  • 後継者以外の家族(次男・長女)との資産分配の問題

「事業を次の世代に確実に引き継ぎたい」「会社を売却せず、家族経営を続けたい」「従業員の雇用を守りたい」という創業者の強い思いを受け、当事務所では10年間の長期計画による段階的な事業承継プランを提案しました。

当事務所のアプローチ

事業承継は単なる株式や経営権の移転ではなく、「人・資産・知的財産・顧客」など企業の全ての価値の承継が必要です。当事務所では、以下の3つの柱を中心とした総合的アプローチで、B社の事業承継を支援しました。

1

経営基盤の強化

事業承継を成功させるためには、承継する企業自体の経営基盤が強固である必要があります。組織体制の整備、業務の標準化、収益性の向上などを通じて、個人に依存しない強い企業体質の構築を支援しました。

2

税務・法務対策の実施

自社株の評価引き下げや事業承継税制の活用など、税務面での最適化を図りました。また、株式の段階的移転、組織再編などを通じて、税負担を最小限に抑えながら円滑な承継を実現するための法的手続きを支援しました。

3

人的承継の推進

後継者の育成プランの策定、幹部社員の巻き込み、取引先との関係構築支援など、事業の根幹である「人」の承継を重視したアプローチを取りました。特に、創業者から後継者への段階的な権限委譲プロセスを明確化しました。

10年間で実施した主な対策

Phase 1:基盤整備期(1〜3年目)

  • 事業承継計画の策定と関係者への共有
  • 後継者を取締役に就任させ、経営への参画を開始
  • 組織体制の見直しと権限委譲の仕組み構築
  • 自社株評価の現状分析と対策立案
  • 相続税の試算と納税資金対策の検討
  • 事業承継税制の特例承継計画の作成・提出
  • 経営理念・ビジョンの再構築と社内浸透

Phase 2:承継準備期(4〜7年目)

  • 後継者を専務取締役に昇格、営業部門の責任者に任命
  • 経営情報の「見える化」と業務プロセスの標準化
  • 新規設備投資による生産性向上と自社株評価引き下げ
  • 自社株の段階的贈与(事業承継税制の活用)
  • 従業員持株会の設立と一部株式の分散
  • 取引先・金融機関への後継者紹介と関係構築
  • 幹部社員の育成と権限委譲
  • 株主間協定の締結(他の相続人との合意形成)

Phase 3:承継実行期(8〜10年目)

  • 後継者を代表取締役社長に就任、先代は会長に
  • 残りの株式移転と相続税対策の完了
  • 先代会長の役割の明確化(技術顧問としての活動)
  • 創業家一族の資産管理会社の設立
  • 新社長による中期経営計画の策定と実行
  • 後継者を中心とした新体制の安定化支援
  • 事業承継後のフォローアップと税務サポート

結果

10年間にわたる計画的な事業承継の取り組みにより、以下のような成果が得られました:

  • 経営の安定移行:創業者から後継者への経営権の円滑な移行が実現し、業績の落ち込みなく事業承継を完了
  • 税負担の大幅削減:自社株評価額を当初の約5%まで圧縮し、相続税・贈与税の負担を最小化
  • 事業の成長継続:事業承継期間中も年平均3%の売上成長を維持し、最終年度には過去最高益を達成
  • 組織力の強化:個人依存から組織運営への転換により、経営基盤が強化
  • 従業員の定着:承継プロセスの明確化により従業員の不安を払拭し、離職率が低下(10%→3%)
  • 取引先との関係維持:主要取引先との取引継続率100%を達成
  • 家族間の信頼関係維持:公平な資産分配により、親族間の紛争を予防

当初は息子に会社を継がせることに不安がありましたが、誠実税理士法人さんの支援により、計画的に準備を進められたことで安心して経営を譲ることができました。特に評価できるのは、税金面だけでなく、組織や人材の面まで総合的にサポートしてくれたことです。10年という時間をかけたことで、息子も自信をもって経営に臨めるようになり、社員や取引先からの信頼も獲得できました。今では会社が順調に成長を続けており、引退した私も安心して次の人生を歩めています。

B社 前代表取締役(現会長)

精密部品製造業(創業55年)

ポイント

この事例から得られる重要なポイントは以下の通りです:

  • 早期着手の重要性:事業承継は5〜10年の準備期間が理想的であり、早期に着手することで選択肢が広がる
  • 総合的アプローチ:税務対策だけでなく、経営基盤強化、組織体制整備、人材育成など多角的な取り組みが必要
  • 段階的移行:経営権・所有権・知的資産の移転を段階的に行うことで、リスクを最小化
  • 明確なロードマップ:具体的なスケジュールと達成目標を設定し、関係者間で共有することの重要性
  • 関係者の合意形成:後継者、他の家族、従業員、取引先など、すべての関係者の理解と協力を得ることが成功の鍵

当事務所では、このようなクライアント企業の状況を詳細に分析した上で、最適な事業承継プランをご提案いたします。特に中小企業の事業承継においては、「会社を残す」ことと「税負担を抑える」ことの両立が重要です。早めの対策で、大切な会社を次世代に確実に引き継ぎましょう。

あなたの会社も円滑な事業承継を実現しませんか?

当事務所では、お客様の事業内容や経営状況、ご家族の状況などを詳細に分析した上で、最適な事業承継プランをご提案いたします。「後継者への引継ぎが心配」「会社を残したいが税金が不安」というご相談は、まずは無料相談から始めてみませんか?